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伸びるのは「書く力」だけじゃない。ベネッセ文章表現教室で身に付く“伝える”ためのスキルとは

「文章表現教室」と聞いて、思い浮かべるのはどのような教室ですか?

作文や小論文の書き方を学ぶ教室でしょうか。結果としてそれらの力が身についていくことはありますが、実は「ベネッセ文章表現教室(以下、文章表現教室)」は、文章が書けるようになることを一番の目的にした教室ではありません。お子さんが安心できる環境で、文章を書くための土台となる「考える力」「伝える力」「コミュニケーション力」を育んでいきます。

では、具体的にどのような授業をしているのでしょうか。現在はベネッセ文章表現教室のオンライン教室長を務めている野坂亘に、日々の授業や教室運営の中で大切にしていることを聞きました。

まずは「表現していい」と思えることから

文章表現教室の特徴について教えていただけますか。

文章表現教室の中で一番大切にしていることは、「自分の気持ちや考えは、素直に表現していいんだ」と子どもたちに実感してもらうことです。そのためにつくっているのが、「3つのおきて」です。
1つ目、「できるところまで、頑張って考える」
2つ目「ほかの人をバカにしない」、
3つ目「『どうせ…』のような態度を取らない」
これを毎回授業の冒頭に子どもたちと一緒に確認するようにしています。心理的に安心できる環境を整えてあげることで、自分が持っているものを全力で出しやすくなると思っています。 

子どもたちは、安心できる環境でないと自分の本心はなかなか言うことができません。誰かから評価されたり馬鹿にされたりすると、それがプレッシャーになり、「これでいいのかな?」「こうしたら良かったのかな?」と頭で考えてしまう。そうすると、自分の考えとは違う要素を取り入れて表現してしまうと思うんです。

お子さんが自分の気持ちや考えを表現できる環境をつくることを大切にしているのですね。

そうですね。保護者の方からのお問い合せとしては、「作文を上手く書けるようになってほしい」「受験対策として文章を書けるようになってほしい」という内容が多いのですが、実は文章が書けるようになることを目的とした教室ではないんですよね。自分の気持ちや考えを表現するための手段の一つが「文章を書くこと」であって、それはあくまでアウトプットの副産物です。

なので、「文章表現教室」である前に、「“表現”教室」なんです。表現するためには文章以外にもさまざまな手段がありますが、一番相手に伝わりやすく、社会でも必要とされるのは文章でのアウトプットではないかと考えています。

文章を書くことは、あくまで伝える手段

保護者の方には、文章表現教室のことをどのように伝えているのでしょうか。

結果的に文章力がつくことに繋がっていくことはありますが、一番の目的はそこではないことは最初にお伝えしています。なぜ文章を書けるようになってほしいと思っているのかを保護者の方にじっくりと伺っていくと、「自分の意見を言える大人になってほしい」など、こんな大人になってほしいという願いがあることがわかります。
「文章を書けるようになってほしい」という思いの奥には、子どもが成長して大人になってからのことを絶対に考えているんです。そこをお伺いしながら私たちが考えているお子さんの成長についてもお伝えしていくと、納得していただけることが多いですね。 

授業では、具体的にどのようなことをするのでしょうか。

表現するためには、自分の気持ちや考えを伝えていいんだという安心感があることに加えて、自分がどんな人間なのかを知っていることも大切だと思っています。なので、教材の中にはメタ認知(※)を促すような内容も多く含まれています。 

例えば、小学校4年生では「自分の取扱説明書」を作ります。楽しかったことや嬉しかったことだけではなく、自分がどんなときに嫌な気持ちになるのか、どんな風に接してほしいかなど、自分の特徴を振り返ってもらう。それを相手に伝えることで、自分自身への理解を深められるような内容になっています。

※メタ認知:冷静で客観的な判断をしてくれる頭の中の自分。 学習にたとえると、「どう覚えると覚えやすいのか」「学習全体はどのように進んできたのか」などを、第三者の視点で振り返ったり評価したりすること。(参考:ベネッセ教育情報:メタ認知とは?教育で注目される理由や子どもの力の伸ばし方は?

無理はさせない。お子さんのペースを大切に

これまでに印象的だったお子さんはおられますか?

たくさんいらっしゃいますね。海外出身で、日本語の文章を書くことが難しかった2年生のお子さんが通われていたことがあります。それが、6年生になる頃には自分の考えやその場の状況がしっかりと伝わるような文章が書けるようになりました。その成長には本当に驚きました。また、文章表現教室に通っただけで、塾には一切通わずに公立の中高一貫校に合格したお子さんもおられます。自由な発想を元に、自分の気持ちや考えを表現する方法を身につけていたことも影響したのではないかなと思います。 

中でも一番印象に残っているのは、小学校5年生からオンライン教室に入られたお子さんです。とにかく自分の意見を言うことが怖くて、「〇〇ちゃんはどう思う?」と話を振られると、その瞬間にボロボロと泣き始めて画面からいなくなってしまうようなお子さんでした。そのような状況でも、授業が終わった後に話をすると「発表できるようになりたい」「泣いちゃうかもしれないけど、話は振ってもらって大丈夫」と自分の意思を示してくれました。そんなやり取りを何度か繰り返していました。

6年生になったある日、「今日は自分の意見を言うと決めたんです」と話してくれて、それからは手を挙げて発表する回数がどんどん増えていきました。今はもう卒業されて中学生になっており、学校でも変わらず自分の意見を伝えられるようになったそうです。

それは大きな変化ですね。一体、何がそのお子さんを後押ししたのでしょうか?

やはり関わってくれていた先生たちの姿勢ではないかなと思っています。授業の中で問いかけたり話しかけたりすることはありますが、決して無理に発表させるようなことはしません。「大丈夫だよ」と伝えながら見守り、最終的にどうするかはお子さんに決めてもらっていたことが、安心感に繋がったのではないかなと思います。そして、お子さん自身も「自分から一歩を踏み出したい」と思い続けてくれたことも大きかったのではないでしょうか。 

オンライン授業の意外な良さとは?

オンラインだと実際に会うよりも関係性を築くことが難しいように感じますが、その点はどのように感じていますか?

実は、オンラインで話すことは実際に会って話すことよりも距離が近いのではないかなと思っています。オンラインであれば、一つの画面を通じて全員と顔を合わせることができるので、お子さんは「先生はいつもこっちを見てくれている」と感じることができます。実際の教室だと、一人のお子さんを見ているときは他のお子さんのことを見られなくなってしまう時間がどうしてもあるんですよね。画面を通じて先生がちゃんと自分を見ていることが伝わり、みんなと繋がっている実感が得られるのはオンラインの良さだと思います。

また、お子さんがどんな文章を書いているのかは、オンラインだと先生から見ることはできません。それは一見ネガティブな点にも思えますが、実は良さでもあるんですよね。お子さんにとっては、誰にも見られていない安心感から自分が思ったように書くことができます。そして、先生はお子さんがどんな文章を書いているか見えないからこそ、どんなことに困っているのかを丁寧に聞こうとします。お子さんの方も一生懸命言葉で伝えようとしてくれるんですよね。

さらに、オンラインであればマイクをオフにできるので、周りの人のことを気にせず音読ができます。自分が書いた文章を黙読するだけでは間違いに気づきにくいのですが、実際に声に出して読んでみると、違和感のある文章だとそこで引っ掛かります。そうすると、お子さんは自分で間違いに気づくことができます。

オンライン授業の良さ 

・先生がいつも見てくれている安心感がある
・周りを気にせず、書くことや音読に集中できる
・言葉での丁寧なやり取りが生まれる

子どもの勇気を、まずは受け止めて

野坂さんご自身は、文章表現教室の運営に携わってきて変化したことはありますか?

私自身はもともと自分の本心を隠してしまうタイプで、あえて思っていることとは違う答えを言ってしまうことがありました。上手く伝わるかどうかが不安だったんですよね。それが、文章表現教室に関わらせてもらう中で徐々に変化してきた実感があります。良いのか悪いのかわかりませんが(笑)、わがままを言えるようになったというか。何より、私が素直に自分の気持ちや考えを表現できていなかったら、それをお子さんたちに伝えることもできないですしね。教室運営に関わらせてもらいながら、私自身も一緒に学んでいるところはあるなと感じています。 

また、私自身がずっと関心を持っていたのは、子育てをしている保護者の方をサポートしていくことでした。子どもの頃は特に、自分の家族と一緒に過ごす時間が一番長いと思います。そうすると、自分の親の影響を強く受けます。なので、やはり保護者の方の在り方や考え方がすごく重要なんですよね。学校や塾に通うだけでは、子どもの成長をサポートすることには限界があるのではないかなと思います。

この数年でオンライン教室が開校したことで、必要なときは授業の後すぐに保護者の方とお話することができるようになりました。それは嬉しいことですね。保護者の方にとっても、授業を受けているお子さんの様子を見られることは、安心感にも繋がっているのではないかなと思います。

最後に、文章表現教室に関心を持たれている保護者の方にメッセージをいただけますか。

私たち人間は一人ひとり自分の個性があり、違った考え方を持っています。それは子どもも同じです。大人から見ると、子どもはあまり考えていないように見えることもあるかもしれませんが、実はその数倍考えているんです。まずはそれを信じてあげてください。

そして、お子さんが勇気を出して言ってくれたことを、一旦は受け止めてほしいなと思います。大人はどうしても瞬時に物事の善悪を判断してしまいがちですが、まずは「伝えてくれてありがとう」という気持ちで接してほしいなと。そうすると、お子さんはどんどん自分の気持ちや考えを伝えてくれるようになると思います。文章表現教室でも、そんな風にお子さんが安心して自分を表現できる環境を整えることを大切にしています

PROFILE

野坂 亘

ベネッセ文章表現教室オンライン教室長 兼 マーチャンダイザー(コンテンツ責任者)
2007年~:東京個別指導学院 昭島教室教室長
2008年~:東京個別指導学院 三鷹教室教室長
2014年~:家業を継ぐために退社
2018年~:東京個別指導学院 再入社 サービス開発部
2019年~:ベネッセ文章表現教室
2020年~:ベネッセ文章表現教室オンライン教室長
2022年~:1onlineサービスに従事、のちにセンター長
2023年~:現職

※サービス内容、役職・部署名など掲載内容は取材当時のものです。

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